結論、Elementor と Astra, 両方有料版にする価値はある?

Elementor はページビルダー。Astra はテーマ。

そもそも両方の有料版(Pro 版)を比較する意味はあるのでしょうか? というと、あります。

まず、 Elementor ですが、無償版はページビルダー。クラシックエディターやブロックエディター(Gutenberg)と同様の、コンテンツエディターということもできます。より、ビジュアル・デザインに寄ったブロックエディターのようなツールと言えます。ただし、Pro 版となると、呼称が変わってテーマビルダーと呼ばれます。

名前が変わるだけでなく、 Elementor Pro ではヘッダーやフッター、サイドバーといった、通常テーマが管理・デザインを支配する領域をオーバーライド(上書き)して柔軟なデザインを行えるようになります。これが筆者、楽介の考える最も大きな価値で、追加で使用可能になる Elementor のパーツ・ウィジェットについては(有用なのですが)おまけかなと感じています。

一方のAstra。高速かつ高機能なテーマです。

Essential Bundle 以上の有料版になると Elementor (またはBeaver Builder)で利用できるパーツ・ウィジェットが大幅に増加します。ヘッダーやフッターのレイアウトの自由度が大幅に上がります。と、ここで気づくのが、「お互い、機能が重複しているのでは?」ということです。

実際、アプローチの仕方は異なりますが、結構な部分で重複しています(Astra は公式サイトで、Astra Pro があれば Elementor は Pro じゃなくていけるぜ! みたいなこと書いてますね)。

Elementor と Astra 両方を有料版にする価値は?

あります。

なぜかというと得意分野が異なり、ウェブサイト全体を構築するスピードが変わります。品質や、完成するサイトのクオリティも同様に向上します。

特に顕著な部分

正直なところ、楽介も「いや、Astra Essential Bundle があれば Elementor はフリー版で十分でしょ」と思っていた時期もあります。ただ Astra の致命的な欠点は、サイドバーがとにかく「弱い」。というか、ほぼ手が入っていないと言っていいでしょう。

WordPress 5.9系になってから、Wordpress の サイドバー・ウィジェットエリアも Gutenberg (か、それと同等の)ブロック管理方式となりました。これはこれで、将来的に期待できる部分ではあります。また、 Astra Pro にすると、サイドバーを様々な条件で切り替える、 Elementor Pro のページビルダーとほぼ同一の機能が実装されています。

しかし Elementor Pro のように、コンテンツを実際に表示した状態でカラム幅を含むレイアウト調整・高機能な種々のウィジェットの追加はできません。

Astra の開発元である Brainstorm Force による、 Ultimate Addon for Gutenberg(以下、UAG) というプラグインがあり、これは Astra のフリー版ともPro版ともよく馴染みます。そして、Elementor のプラグインほどではないですが、WordPress 標準のウィジェットよりは高機能・スタイルしやすいブロックがバンドルされています。

しかし、これはサイドバーなどのウィジェットエリアではちゃんと動作しません。問い合わせましたが、ダメだそうです。ただ、問題は開発元も認識しているそうで、近いうちに対応版をリリースしたい(から頑張ってるよ)との応答がありました。

UAG がウィジェットエリアで動作するようになったら、 Astra Essential Bundle だけでもいいかもしれません。

Astra Essential Bundleの有料版があるといい理由

高速化設定ができる

他のサイトではあんまり言われないような部分を先頭に持ってきましたが、 Astra Pro 以上のいいところは、高速化のために「CSS を書き出しておける」ことです。

色設定やフォント設定などですね。

もちろん、キャッシュプラグインを利用することである程度カバーできます。しかし、静的なファイルとして書き出しておくことで、サーバー側のキャッシュだけでなくクライアント側(ブラウザ側)のキャッシュ設定も有効に活用されます。これにより、より高速化・そして Pagespeed などの評価の数値に貢献します。

高機能でカスタマイズできるテーマの宿命とも言える重さに対する一つの解です。やはり、これは外せないでしょう。

気軽に全体設定ができる

ヘッダー・フッター・サイドバーを高度なエディターで編集できるのが Elementor Pro の利点です。そのために両方買う価値があるというのは先述の通りです。

しかし、(サイドバー以外)そこまで厳密なデザインを行うか? は別問題です。 Astra Pro でも多種のヘッダー・フッター、そしてメニューに対応しており、WordPress のカスタマイザから設定が可能です。

どうしても追加できるコンテンツには(Elementor と比較して)制限が発生しますが、ヘッダー・フッターについてはページのメタ情報が主体となります。重要なのは必要な情報がサイト全体のトーンを壊さずに設定されることで、「こんなこともできるんだぜ、すごいだろ!」とデモを行うことではありません。

それを考えると、 Astra Pro の提供する機能で通常の用途であれば十分です。

サイドバーについては、「そもそもサイドバーが必要か?」という点をまず考慮に入れるといいでしょう。昔はサイドバーがあることが通常のウェブサイトの条件のようなところがありました。ただ、現在はレスポンシブレイアウト(スマートフォン対応)が主流となり、サイドバーがないサイトも多いです。企業・団体のウェブサイトであればヘッダー・フッター・オフキャンバスメニューの構成で通常は十分でしょう。

動的なコンテンツの追加(つまりブログを書く)がない場合は、Elementor で 2カラムレイアウトを作成し、テンプレートとして保存しておくのも一つの手段です。

楽介は(楽をしたいので)、ブログはクラシックエディターでどんどん書きたい! と思うので、ブログ部分だけ Elementor Pro のテーマビルダーで制御しています。

いろんなサイトのテンプレートが使える

個人でサイト作りをして稼ごうと思うと、Astra Essential Bundle の一番の(というと開発さんに怒られそうですが)魅力はなんといっても、スターターテンプレートの豊富さです。

そのままは使えないとしても、色々なレイアウト・デザイン、配色、写真などのグラフィックがスターターテンプレートに含まれています。これらのスターターテンプレートからインスピレーションを得たり、使いやすいようにカスタマイズしたものを自分用のElementor の Template として保存しておけば、自分のデザインの引き出しが増えます。

また、やりたいけど、どうやって Elementor で実現したらいいんだろう? というヒントを直接触って学習する教材にもなります。

Elementor にもページ全体のテンプレート、ブロック単位のテンプレートがあります。しかし、動いているサイトとしてひとつのまとまりになっているため、一覧性というか、周回性に優れていて便利です。加えて、Astra Essential Bundle で使える Ultimate Addon for Elementor (以下、UAE)を活用したデモを見られるのもいいですね。

UAE がついてくる

Elementor の無料版を使って、「すごい!」と思いつつちょっとがっかりするのが、思ったより挿入できるパーツが少ないこと。特に、ウィジェットの一覧に最初から Pro 版が表示されているので、使いたくても使えない、悔しい思いをします(笑)。

Elementor の無料版の制限は、大体、「動的なコンテンツ」かどうかで分かれています。投稿の一覧とか、タグとか、ですね。

ただ、ウィジェット・ブロックとして付属しないだけで、機能自体が潰されているわけではありません。ですので、UAE などを導入すると、問題無く投稿一覧などの機能を導入できます。

もう一つがっかりするのが、「もうちょっとオシャレなデザインを簡単に作れると思ったのに……」ということです。Elementor 標準にも、ブロックのテンプレートが付属しています。が、先述のようにこれらのデザイン済み・スタイル済みのパーツについては、スターターテンプレートのある Astra Essential Bundle の方が有効です。

ライセンスが総合的にお安い

Elementor Pro には、Life time(買い切り)ライセンスがなく、さらに、同時にインストールできるサイト数の上限が厳しいです。

一方で Astra には買い切りライセンスがあり(もちろん、年間プランもあります)、インストール数に制限がありません。

Elementor Pro も同時にインストールできる制限というだけで、ライセンスを非アクティブにしても設定済みのサイトはそのまま運用できるので、面倒くささを我慢すれば、ライフタイムライセンス以外の不利はないと言っていいでしょう。

副業で細く長く続けたい場合、年間ライセンスの毎年の費用負担がつらい場合があります。逆に、節税も考えて毎年費用を払った方がいい! という考え方もありです。これは最終的には好みですが、単純に出ていくお金だけを考えれば、Astra に分があると言えます。

楽介オススメの組み合わせ

Elementor Pro + Astra Essential Bundle が、できることが最大化されると思います。

逆に、 Astra Growth Bundle は、ちょっと日本人には使いづらいかなぁと思います。

もう少し費用を抑えるなら?

Elementor Pro + Astra Pro でいいでしょう。CWV の重要性がますます増加する今、 Astra Pro の高速化機能は重要です。

実はデザインやコーディングに自信があって、スピードアップに使いたいだけ!

Elementor Pro + Astra Free でいいと思います。

Astra pro の高速化機能は、それでも有効です。しかし、自分で WordPress のカスタマイズやチューニングをサイトにあわせて実行するだけの実力があるでしょうから、キャッシュ・圧縮プラグインなどを駆使して問題無い運用ができるでしょう。

ブログページがない、またはサイドバーは要らないよ!

Elementor Free + Astra Essential Bundle がいいでしょう。

固定ページに使えるテンプレートが豊富で、サイドバーが必要でもブログのように動的に記事をどんどん追加したいという要望がなければ、Elementor Free のテンプレート機能を使ってサイドバーを固定的に追加する(内容は動的)方法で対応可能です。

企業サイトではニュースリリースなどのお知らせページは作成されると思います。これを毎回 Elementor でクライアントが作成するのは大変です。その場合、機能的に劣りますがWordPress 標準のサイドバー機能とAstra Pro のサイドバー拡張機能(特定ページのみサイドバーを出すなど)を使うといいでしょう。

もっとも、企業サイトではトップページこそ、段組された擬似的なサイドバーが必要とされ、個別ページではオフキャンバスメニューの方が望ましいというパターンが多いでしょう。

終わりに

今回は、当サイトでオススメしているテーマとプラグイン、Astra と Elementor の有料版についての解説でした。

惜しいのは、 UAG が現状ではサイドバーに対応していない点ですね(だからこの記事を書きました)。UAG がサイドバーに対応すれば、 Astra Pro や Astra Essential Bundle だけで対応可能なウェブサイトが大きく増えます。

Elementor Pro も、 1ウェブサイトのみであれば年間$49とかなりお得な金額です。ただ、どうしてもアクティブにできるサイトがひとつだけだと、活動の度にアクティブ・非アクティブを繰り返すという「無駄」が発生します。

雇われ仕事ではない、副業や個人事業において、時間の節約は利益と産みます。自分の作業時間の単価を考慮して、 Elementor Pro のライセンスを購入するのか、またはどのプランにするのかは決めていきたいですね。

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